遊び

お客さんも演奏できるライブハウスMr.K【行橋】

壁に沿ってずらりと並ぶギター
ライブハウスと聞くと、何を思い浮かべますか?演奏を聞きに行くとか、バンドをやっている人はライブを開くとか?
私はそんなイメージを持っていました。

取材に伺ったライブハウス「Mr.K」は、そんな私のイメージとは全く違っていました。「とにかく敷居が低い」「ライブがなくても開いている」「誰かに弾いてもらおうと楽器がずらり並んで待っている」ようなお店。ステージに演奏する人がいなかったら、お客さんの飛び入り演奏や見知らぬお客さん同士のセッションもOKなのだそう。なんだかこのライブハウス、「常時ドラマが生まれてんじゃないかしら」っていう気がします。

どうしてそんなお店なの?という素朴な疑問の答えは、ライブハウスオープンまでの物語の中にありました。

今回は「偶然から生まれるドラマを作り出す場」とも言えるライブハウスMr.Kの物語を紹介します。

新田原駅から歩いて45秒のライブハウス「Mr.K」

ライブハウス「Mr.K」外観
新田原駅前に小さなライブハウスがあります。定年後にライブハウスをオープンしたいという、下宮弘樹さんの願いが叶いました。閉店時に見ることができる、お店のシャッターに描かれたギターを弾く男性の後ろ姿がとても印象的です。

店名の「Mr.K」は、山の事故で亡くなった下宮弘樹さん・晴美さんご夫婦の息子・圭太郎さんのイニシャル、そして父・弘樹さんが好きな吉田拓郎の楽曲「Mr.K」が由来です。

店内に飾られた写真など
店内には楽器や写真、絵などがずらり。息子の圭太郎さんと愛車や友人との写真も飾られています。

お酒を飲んだ時はお店の前が新田原駅なので便利。1人でふらりと来店も歓迎だそうです。

コーヒーを淹れる
お酒が飲めない人は、コーヒーはいかがですか?

初対面の人同士、即興でセッションも楽しめる

ライブハウスのステージ
Mr.Kはお客さんにマイクを開放する、いわゆる「オープンマイク」を特別なイベントとして行うのではなく、ライブをしていない時は誰でもステージに上がれるお店。体験のつもりでもOKというくらいの気軽さでよいのだそう。

つまり音楽バンドをやっていないお客さんも、その気になれば楽器演奏やうたも歌える気楽なライブハウスなのです。そうは言ってもバンドをしている人以外にとっては、敷居が高く感じるかもしれません。しかしちょっとなら弾けるという人でも、成り行き次第ではサポートをしてもらいながら、即興のバンド(?)でなんちゃって奏者になれなくもない。そんな包容力のある、温かい空気が漂うライブハウスです。

実際にここで出会ってすぐ、お客さん同士がセッションをすることもあるそうです。流れる楽曲は昭和のフォークソング〜洋画・ロックまで幅広く、楽譜も置いているとのこと。

敷居の低いライブハウス「Mr.K」。若者から定年後の生活を楽しむ方まで集い、音楽を楽しみ交流を深めたいとオーナーの下宮さんは考えます。

息子・圭太郎さんが父の夢を後押し

息子・圭太郎さんとの思い出
下宮さんは10代から20代にかけて、ギターに夢中でした。その後音楽から離れた時期はありましたが、50代になってライブハウスを訪れたのをきっかけに、また音楽への情熱が戻りました。将来はライブハウスをオープンしたいという夢を妻の晴美さんに話したところ、芳しくない反応。なんと1番の理解者である晴美さんは反対でした。

圭太郎さんは亡くなる半年前に、急にギターに興味を持ち始めました。下宮さんは圭太郎さんにギターを教え、その後猛特訓をしてメキメキ上達したそうです。事故に遭う5日前には親子3人でライブハウスへ行き、初めて人前で弾き語りもしました。この日晴美さんは、圭太郎さんに下宮さんのライブハウスをオープンするという夢のことを伝えました。晴美さんはあまり気乗りがしないと話すと、圭太郎さんは「とてもいいと思う、応援するよ」と言ったそうです。

家族でライブハウスへ行って弾き語りをした時間はとても楽しく、充実したひと時だったと下宮さんご夫妻は語ります。その日、家族3人で楽器と共に写した写真が最後の一枚になるとは、想像すらしなかったでしょう。

遺した言葉が導くように

ライブハウス「Mr.K」入り口
圭太郎さんが遺した「応援する」の一言は、その後の下宮さんご夫妻に大きな変化を与えました。これまで下宮さんの夢に反対していた晴美さんでしたが、圭太郎さんの言葉が心に残り圭太郎さんのために「何かを残したい」と強く思うようになったそうです。下宮さんの気持ちもまた、同じでした。

まず物件探しを始めました。小倉も含め広い範囲で探していたのですが、なかなかよいところが見つかりません。探している間にやはり住んでいる行橋市がよいだろうと思い始めた頃、新田原の元カラオケ店だった物件が見つかりました。ライブハウスとなると防音対策が必要ですが、カラオケ店だった物件なので大きな工事が要らずとても助かったそうです。
しかし壁が防音であったとしても完全に音を遮断できるわけではないため、心配なことがありました。難航していたライブハウスの夢でしたが、圭太郎さんが遺した言葉に導かれるように、途中からいろんな偶然が重なり、音漏れで1番心配していた事も解決。

ギターを弾く男性の後ろ姿をシャッターに描いてくれたのは下宮さんの知人で、モデルは圭太郎さんです。まるで圭太郎さんが「店内に向かってギターを抱えて座り、一緒にセッションを楽しんでいるように感じる」と下宮さん。大きな喪失感を味わった下宮さんご夫妻は、この場所が同じような思いを抱える人たちにとって、心をフル充電できるスポットにもなればと願っています。

ライブハウス「Mr.K」の概要

Mr.K内装内装は細かいところにもこだわりが。写真左はお手洗い、右は壁に固定された時計
店名 sound bar Mr.K
ジャンル ライブハウス
営業時間 18:30〜24:00
電話番号 050-1495-3021
定休日 火曜・水曜
駐車場 有り(要問合わせ)
座席数 15〜17席
住所 福岡県行橋市道場寺1502-1 イオメール新田原101
LINE LINE Mr.K←問い合わせ可能
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ABOUT ME
あゆみ
美容&医療ライター、美容・医療分野記事広告類の法令チェック・リライト、記事の編集・校正・校閲、薬事コンサルティング、西日本新聞社発行の地域情報紙「ファンファン北九州」ライター。過去に臨床検査技師から研究開発職にキャリアチェンジし、化粧品開発者として10年勤務後、大学で法学を学ぶ。 商業出版を経験『ピーターラビットで学ぶ!英語イメージ楽読術』(主婦の友社 2014年)、現在はブックライターとしても活動。尼崎市出身、行橋市在住。「英語絵本の会」代表。