食べ物

「伝法寺庄」 が「手打ち 文殊そば処 」として リニューアル オープン

築140年超の古民家で郷土料理が楽しめる福岡県築上町のレストラン「古民家食庵 伝法寺庄(でんぼうじのしょう)」が2024年9月21日、2年ぶりに営業を再開、[手打ち文珠そば処」として新装オープンしたので行ってきました。

入り口の暖簾新しい暖簾がお出迎え

新しい「伝法寺庄」とは

入り口をはいると、100年近く前に商店で使われていた「引き札」(現在のチラシ)が飾られています。

「文殊蕎麦処 」は、築上町の中心部から城井川(きいがわ)に沿って車で10分ほど、旧蔵内邸から寒田方面に3キロほどのところです。随所にある道案内に沿って進むと谷間に田畑が広がる伝法寺地区の風景が出迎えてくれます。「伝法寺庄」の1キロ先には、樹齢1900年の巨樹「本庄の大樟」があります。

店は古いれんが塀に囲まれ、看板はありませんが、営業時には県道沿いの駐車場に小豆色の「のぼり」がはためいています。



平安時代に宇佐神宮の荘園として栄えた伝法寺ですが、その集落に溶け込んだ隠れ家のような店です。

蕎麦打ち名人のプロフィール

地元の味と共に、こだわりの蕎麦を提供するのは、蕎麦打ち職人としての技術に加え、ソムリエ、チーズ専門家、そしてジビエスペシャリストとしても活躍する船木陽子さんです。

船木さんは、築上町が初めて受け入れた地域おこし協力隊員として、地域の特産品を開発、販売ルートを確立するなど、地元の人たちと共に活動しました。それまで千葉県に住んでいた船木さんですが、3年の任期が終わったときにはすっかり築上町の自然や風土が気に入り、定住を目指しました。さらに、イノシシやシカなどを捕る猟師の資格を得て、現在はお隣の豊前市で獣肉処理加工施設に勤めています。

食通を唸らせた味

好きな蕎麦を自分で打てるようになりたいと修業を始め、名人のレベルに到達。地域の方に頼まれて、打ち立てのそばと自家製のだしや天ぷらなどを出前するようになり、毎年何十人分もの年越しそばを打つようになりました。

町内の方が東京から来たお客さんに船木さんの作った鴨南蛮を出したら「これは本物だ、有楽町の駅前にある蕎麦屋の味だ」と絶賛したそうです。船木さんのそばを食べたお客さん達に頼まれて、そば打ち教室も開くようになりました。

 

「文殊そば御膳」(税込み1800円)を注文しました。お隣のみやこ町産のそば粉を使用した十割そばです。打ち立てのそばは、もちもちとした食感で、良い香りが口中に広がりました。

伝法寺の庄にほど近い、「智恵の文殊様」の呼び名で親しまれる正光寺境内のわき水で打ったそばに、美味しいめんつゆが絡みまさに逸品でした。

そば御膳の郷土料理

きれいに並んだ小鉢は、かつての「伝法寺の庄」の伝統を引き継ぎ、地域のお母さんたちが心を込めて作る、いずれも地元の食材を使った郷土料理。

特にイワシのぬか炊きはいかにも体に良さそう。なんと半世紀以上守ってきた秘蔵のぬか床で作ったそうです。

天麩羅は新鮮な野菜の盛り合わせ、ご飯は地元伝法寺産、セルフサービスによる食べ放題でした。

ワインやチーズに精通し、現在はジビエのスペシャリストとして活動している船木さん。ゆくゆくは蕎麦に合うジビエ料理がメニューに加わるかもしれませんね。

伝法寺庄について

伝法寺の庄は旧竹内家の敷地内にあります。

約2360平方メートルの敷地には、4棟の建物が残されており、蕎麦処に使われている主屋は1880(明治13)年に建てられ、1916(大正5)年に増改築されたという由緒ある建物です。

竹内家は中世にこの地域を治めていた宇都宮氏の重臣の子孫で、地元の名士として親しまれていましたが、2015年8月、土地と建物を町に寄付しました。

その後「古民家食庵 伝法寺の庄」として地産地消の郷土料理を提供するようになり、コロナ禍の前はたくさんのお客様で賑わっていました。

当時、床の間のある部屋では畳に座って食事をするようになっていましたが、高齢のため椅子席を希望するお客様も多かったとか。リニューアルにあたり、築上町は全てのお客様が利用しやすいよう、町内で伐採されたヒノキ材を使ってイスとテーブルを用意しました。特注品の椅子には丸く掘られた窪みがあり、高齢者の域に達した私のお尻に優しくフィットしました。

本庄の大樟を散策

蕎麦処は、城井川の渓谷が織りなす豊かな自然に包まれており、1キロ先には国の天然記念物「本庄の大樟」があります。予約まで少し時間があったので、樹齢1900年という圧巻の巨樹を訪れ、大楠神社に参拝しました。

パワースポットとして名高い大楠神社の境内は爽やかな風が通り、クスの葉がさわさわと揺れています。久しぶりに気持ちが浄化されるのを感じながらそば処へと向かいました。

週末のウェルビーング

予約しておいた席は中庭に面し、周囲の田園を駆け抜ける爽やかな風に、木々の緑が揺れています。打ちたてのそばと懐かしい料理の数々に舌鼓を打ち、新米のおかわりと香りの良い蕎麦茶で、身体の奥から新しいエネルギーが湧いてくるのを感じました。

日常の喧騒を離れ、築上町で自然の恵みを堪能し、身も心もリフレッシュした週末の午後でした。

 

「手打ち文珠そば 伝法寺庄」の概要

店名 手打ち文珠そば伝法寺庄
ジャンル レストラン
営業日・時間 土曜・日曜11:30〜15:00 *2日前までに要予約
電話番号 090-7391-9700(月〜金13時から17時・土日9時から17時)
駐車場 あり
住所 福岡県築上郡築上町大字伝法寺587

 

ABOUT ME
ちさと
築上町のシンボル「本庄の大樟」の近くで、夫と共に、民泊「The Honjorion (ホンジョリオン)」を運営しています。築百年の古民家は、実父嶋田隆が生涯をかけて描いた「本庄の大樟」の絵を飾ったハウスギャラリー。海外や都会のお客様が、里山の自然を満喫し、地産地消の新鮮な食材を堪能して心安らぐひと時をお過ごしになる。そんな「極上の休日」の実現を目指しています。長年、外国人に対する日本語教育に携わり、今は後進の育成・指導。東京の自宅と京築で二拠点生活をしています。