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【行橋・日本語教室】日本の言葉と文化を伝え、異文化に触れるボランティア活動

こんにちは!京築ママライターのあゆみです。
西日本新聞発行の「てくてく京築」10月18日号に掲載されたキラキラスマイルのコーナーで、行橋市で活動する「日本語教室 in ゆくはしKIZUNA」の取材を担当しました。今回は書ききれなかった活動内容や、活動されている方々の様子を紹介します。

海外で生活するとしたら何に困る?

海外からの旅行客ではなく、京築で暮らす海外から来た人を見かけることがあると思います。国籍も様々で、日本で暮らしている理由も様々です。海外から日本へ来る人たちは、始めから日本語がペラペラで問題なくコミュニケーションが取れるわけではありません。そのため、日本に来るとまず言葉の壁に直面します。それがどれほど大変なことか、海外で暮らした経験がなくても想像できると思います。

しかし実際は言葉の壁だけではないのです。言葉は文化と密接な関係にあり、文化が違えば思考や表現方法なども異なります。仮に日本語だけ知識として知っていたとしても、日本文化を知らなければ日本人と円滑なコミュニケーションを取ることは難しい場面が多々あると思われます。

逆に日本人から見ると、海外から来た人が話す日本語の意味はわかったとしても、その言葉の裏側にある心が読み取りづらいと感じる時があると思います。それが文化の違いということなのでしょうね。つまり自国以外の国で平穏に楽しく暮らすためには、言葉だけを覚えるのではなく、習慣や文化も一緒に学んでいく必要があるということです。

行橋市で活動する日本語を教えるボランティア団体

この日は水曜日教室。日によって学習者さんの人数は変わります。

行橋市には、海外から日本に来て暮らしている人たちを支えるボランティアグループ「日本語教室 in ゆくはしKIZUNA」(以下KIZUNA)が存在します。2011年11月30日に活動を開始して以来、2020年3月31日までの間で28か国から466人もの人たちに、日本語を教えてきました。KIZUNAには、市内だけではなく近隣地域から日本語を学習したい人たちが集まります。

彼らに日本語を教えるのは、同じく近隣地域に住む日本人です。日本語教師の資格は不問。ボランティアで日本語を教える人たちの経歴は様々。そこがKIZUNAのユニークな特徴なのだと思います。海外経験のある人もいれば、ない人もいます。

KIZUNAは水曜日と日曜日のクラスがあります。

水曜日クラス 第1, 3, 4水曜日 10:00a.m.〜12:30a.m.
日曜日クラス 第2, 4日曜日 10:30a.m.〜12:30p.m.

※上記日時は変更になることがありますのでご注意ください。ご訪問の際には、フェイスブックページに記載の連絡先(齊藤さん)に電話でおたずねください。
活動に興味のある方は、フェイスブックからコンタクトしてみてください。学習者は毎回お茶代として参加費100円、支援者は年会費1,000円です。

「日本語教室 in ゆくはしKIZUNA」のFBページ

KIZUNAで教えること・学ぶこと

新型コロナウイルス感染対策でマスクは必須、支援者はさらにフェイスシールドも着用します。

KIZUNA会長の齊藤晴喜さんは「KIZUNAは単に日本語を学ぶだけの場ではなく、日本の文化を伝え、地域住民や子どもたちと交流する機会を持つことも大切にしている」と語ります。学習者さんたちと関わる中で、私たちも異文化を学ぶことができると言います。お話を伺いながら、文化や言葉の違う人が集まるコミュニティでは、互いが心を開いて相手を理解・尊重しようとする気持ちを持つことは大切だと感じました。

実は私も、何年か前からKIZUNAで日本語を教えていました。今はライター業が忙しくてお休み中なのですが、KIZUNAに行っていなければ知り得なかったことをたくさん学びました。何より日本人なのに日本語を教えることの難しさを痛感できたことは、大きな発見でした。私たちが日本語を学んだように、彼らは日本語を学びません。すでに日本語ではない言語を母国語として獲得している人は、私たち日本人とは違う説明をしなければ理解し難いのでしょう。ちょうど私たちが英語を学ぶのと同じことですね。

私よりももっと長くKIZUNAで日本語を教えている人は、この国の人は日本語のこの発音が苦手ということを把握していて、どのように指導したら良いかも心得ています。そして関わった学習者さんたちの故郷の文化についてもよくご存知です。その国に行ったことがなくても、伝統や習慣・文化などを知ることができるのですね。

そして忘れちゃいけない食文化。今は新型コロナウイルスの感染予防のために活動が制限されていますが、毎年桜が咲く時期にはお花見をします。お花見といえば桜を見ながらみんなでワイワイお話をしながら食事をしますよね。KIZUNAのお花見は、手作り料理を持参で参加される方もいるため、いろんな国の家庭料理が楽しめるのです。

先生と生徒という関係にはおさまらない

KIZUNAでは日本語を教えるだけではなく、時には日常の困りごとから進学・就職の相談にも乗ります。コロナ前は例年秋に行われた産業祭に、毎年美味しい外国料理を出店していました。当日までの準備も大変で、メニュー作りや材料の調達・試食など、支援者と学習者が力を合わせて取り組みました。

地域や学校との交流や街歩きなどのイベントもたくさんあり、日本語の先生と生徒の枠にはまらない、もっと大きな同じ地域に住む仲間としての繋がりが築けているのだと思います。

コミュニケーションで最も大事なのは言語ではなく気持ち

再び会長の齊藤さんのお話に戻ります。学習者さんたちとのコミュニケーションにおいて、わかってもらえているだろうという憶測は避けるべきで「必ず理解を確認することでミスコミュニケーションが防止できる」と言います。日本語が通じるからと言って、日本人同士の感覚で会話をしていると、思わぬ行き違いが起きる危険性を指摘しています。

この意識は、日頃から日本語を外国語として学んでいる人たちと関わっているから持てるのだと思います。行き違いがないように気をつけるのが、母国語で生活できている側の役割の一つとも言えそうですね。互いの立場を理解し、言葉だけのやりとりではなく相手の気持ちに寄り添うことで、真のコミュニケーションが取れるのでしょう。

異文化を知ることで自国の文化が意識できる

異文化を知ると、視野が広がります。そうすると今まで意識していなかった自国の文化に対して、別の視点が生まれます。自分の行動が他国の人からどう見えるのか、さらには自国の文化が他国の人からどう見えるのか、視野が広がるたびに発見することがあるかもしれません。そのせいか、KIZUNAで活動する支援者の方々はみな生き生きしていて、楽しそうに見えました。

異文化の刺激で人生も豊かに

KIZUNAで日本語を教えている支援者の方々は、バイタリティに溢れています。どうしてこんなに元気で楽しそうなのかと考えてみると、やはり新しいことを学ぶ刺激が大きいのではないかと思いました。異文化に触れると新鮮な気持ち、驚き、興奮など様々な感情が湧いてきます。それは脳に心地よい刺激で、何に対しても意欲的になれるのかもしれません。

学習者さんに日本語や文化を教える立場であっても、学習者さんから学ぶことは教えるのと同じくらい多いのです。学びがあると視野も広がり、今まで見過ごしてきたことが見えるようになると、平凡に感じたいつもの暮らしにも驚きや感動があることを発見できるかもしれません。
KIZUNAのフェイスブックページに連絡先が掲載されていますので、興味がある方は見学してみてはいかがでしょうか。

「日本語教室 in ゆくはしKIZUNA」のFBページ

ABOUT ME
あゆみ
美容&医療ライター、美容・医療分野記事広告類の法令チェック・リライト、記事の編集・校正・校閲、薬事コンサルティング、西日本新聞社発行の地域情報紙「ファンファン北九州」ライター。過去に臨床検査技師から研究開発職にキャリアチェンジし、化粧品開発者として10年勤務後、大学で法学を学ぶ。 学生時代は英語オンチ、今は洋書オタク。趣味が高じて『ピーターラビットで学ぶ!英語イメージ楽読術』(主婦の友社 2014年)を商業出版。尼崎市出身、行橋市在住。「英語絵本の会」代表。