こんにちは、京築ママライターのあゆみです。
みなさん「連歌」ってご存知ですか?
私は関西から行橋市に引っ越してきて、初めて「連歌」をされている方にお会いしました。それまでは「連歌」という言葉を聞いたことがあるのかないのか、わからないほどの認識で(笑)
そんな私が今年の1月11日に須佐神社で「初連歌会」を見学してきました! そして無謀にも飛び入り参加で1句詠んできました(^^;;;;;
滝汗流した私の連歌初体験も合わせてのご報告です(*/∇\*)
連歌とは
連歌とは、短歌の上(かみ)の句(五七五)と下(しも)の句(七七)とを、二人が応答してよむ詩歌の一種です。*1 二句だけで終わる連歌を短連歌といい、百句続けていく百韻や四十四句続ける世吉(よよし)などは長連歌と呼ばれます。*2 連歌の原型は奈良時代にでき、平安時代に短連歌が流行し長連歌が生まれ、鎌倉時代後期には百韻が主流となったそうです。*3
室町時代から続く、行橋の今井祇園奉納連歌
行橋にある今井津須佐神社は、享禄3年(1530年)から欠年なく「今井祇園奉納連歌」が行われています。こんなに長く伝統を受け継いでいるのは、全国でも行橋だけだそうです。これはすごいことだと思います!
これを知った時「是非とも見に行かなければ」と感じて、2021年の1月11日午前11時から行われる「初連歌会」を見に行きました。
2021年の初連歌会@須佐神社
会場は2018年の西日本豪雨から3年ぶりの社殿。中に入ると会員の方々はすでに着席、始まるのを待っていました。着物姿の女性も多かったです。こんな雰囲気を体験するのは初めてのことで、見学の私が一番緊張していました。
11時になり、発句が詠まれました。
「二柱(ふたはしら)まさへる宮や初明り」
とんでもなく長い歴史のある伝統行事と、この雰囲気に圧倒されてしばらくは思考停止状態でした(笑)
言葉遣い難しい! ここにいる人、みんな当たり前に理解できてるんだろうなー!!と思うと、どうも場違いな場所に来てしまったらしいと感じはじめました。
とにかく記事として読むに耐えうる取材をしなければとは思うものの、やっぱり尻込みしてしまう自分。
同時に、日本で一番長い奉納連歌の歴史を持つ行橋の須佐神社で、私も同じ空気を感じられるという感動もありました。
連歌の複雑なルールは楽しむためにある
連歌はただ五七五・七七を交互に詠んでいくだけではなく、一度聞いただけでは把握できないほどの多くのルールが複雑に絡み合っています。これを「式目」といいます。
連歌は長句(五七五)と短句(七七)を別の人がどんどん詠み次いで行きますが、同じような歌ばかり続くと、つまらなくなってしまいます。連歌は変化と調和を大切にし、森羅万象、四季折々の景色、人生の中で起きることに対する心情を詠むものだそうです。*4
連歌が同じ景色や一つのものに留まってしまわないように式目が作られ、それに沿って進めていきます。式目は複雑で、初心者にとっては連歌の敷居が高く感じられるかもしれません。連歌会に集まっている人たちも、難しかったといいます。しかし慣れると式目があるおかげで、連歌を楽しめるのだそうです。
式目とは?
具体的な例を上げながら、式目とはどんなものかを紹介します。
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- 部立(ぶたて)
連歌を作るときの用いる言葉(句材)の分類です。季節を表す言葉の他に、光物(ひかりもの)、時分(じぶん)、聳物(そびきもの)、降物(ふりもの)などに分類されます。それぞれの分類がどんな言葉を含むのか、普通は理解できませんよね^^; 光物は「日、月、星」、時分は「夜、朝、夕」、聳物は「霞、霧、雲、煙」、降物は「雨、露、霜、雪、霰(あられ)」です。*5
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- 句数(くかず)
使用する句材には連続使用に関する制約があり、どの句材も2句は続けて使用できますが、属する分類によっては3句まで、5句までと決まっています。
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- 句去(くさり)
句材は使用回数以外に、間隔の制約もあります。季節の句が一旦途切れたら、そこから7句おかなければ同じ季節の句が詠めません。光物は3句、ただし月と月は7句、日と日は5句あけなくてはなりません。時分は夜と夜であれば5句、朝と夕は2句といった具合に、分類ごとに間隔が決められています。*4、*5
式目はとにかく、覚えることがたくさんあって大変。ややこしい。相当頭使いますね。
私が難しそうだなと思ったことは、どの言葉がどの分類に属するのかを判別することです。明らかにわかるものは良いのですが、中には判断に頭を悩ますものがあるのではないかと思います。判断に困ることは、連歌を長くしていてもあるそうで、そういう時は本で調べるそうです。
連歌で使う言葉
連歌は和語が使われます。日本語には和語と外来語(カタカナ語と漢語)がありますが、和語だけを使うそうです。漢語と和語の区別、私はきちんとできる自信はありません(笑)*2
私が連歌会に参加して、知らない用語がたくさんあることに気がつきました。そのいくつかを紹介します。
まず、連歌を作っていくことを「連歌を巻く」と表現します。「巻く」だなんて、ちょっと素敵な表現だなと思いました。連歌全体の記録を「一巻」というそうで、そこから「巻く」といわれているのでしょうか。*6
初連歌会で連歌が書かれている紙の写真が次章にありますが、その紙のことを「連歌懐紙」といいます。それから連歌会では、みんなで歌を詠みあいますが、宗匠(そうしょう)と執筆を担当する人がいます。
執筆はわかると思いますが、宗匠とは文芸・技芸に熟達して人に教えることのできる人のことで、連歌では指導ができる人のことを指します。
先生の指導で私も連歌に挑戦
本初連歌会の宗匠である前田賤(まえだしず)さんから、「せっかくだから1句詠んで」と言われ、アワアワなっていたら、さらに「大丈夫、できるわよ、遊びなんだから♪」と。
簡単(?)だということで「月」をお題にいただきました。
言葉遣いは現代語しかわからないから、今の言葉で書いたものを修正していただきました。
修正済みの私の一句は・・・
「空むらさきに 凍月(いてつき)うかぶ」
オリジナルは五七五だったのですが、それを綺麗に七七に変えていただき、適切なタイミングで詠ませていただきました。
「月」を「凍月」に、語順を変えて七七に。さすが宗匠。
この日、連歌会の13名の方は夕方まで44句の連歌を巻き、神前に奉納されました。
来年もまた、1月11日に初連歌会が行われるでしょう。この先も、ずっとずっと続いていくことを願います。
若手の会員さん、増えて欲しいです。
え?私?!ど・・・どうだろう(^^; 才能ないかも〜〜_| ̄|○
【追記2011.1.31】
後日、宗匠より連絡がありました。あの時読んだ句が下のように変更されたということでした。
空紫に浮かぶ凍月 あゆみ
どこが変わったか気がつきましたか?
宗匠は連座で詠まれたものを奉書紙に清書するときに、一つ一つの句を見直すのだそうです。座で見過ごした文法、文字、季の採り方など、修正があれば直します。
私が詠んだ句は七七で、後の七音が四音と三音に分かれます。(凍月 浮かぶ)
この場合、三音と四音になるように置き換えると、語感が落ち着くのだそうです。
「凍月 浮かぶ」⇨「浮かぶ 凍月」 声に出してみると、
「いてつき うかぶ」⇨「うかぶ いてつき」
うーん、確かに。おさまりがいいと思います。前者も私は好きなのですが、宙に浮いたような終わり方とも感じられます。
いろんな決まりがあって、連歌というのは本当に奥深いものだと思いました!
今井須佐神社はこんなところ
記事トップ画像の鳥居が正面です。
すぐに急勾配の階段があります。この日はあの大雪の後で、まだ少し雪が残っていました。
帰りに階段の写真を撮りましたが、この勾配!!相当怖いし、このボリュームの階段を2セット上がりきったところに社殿があります。日頃デスクワークばかりの引きこもりな私には、かなりハードでした(笑)
目的の場所へ向かう途中、豪雨の爪痕も残っているところを目にしました。
神社名 | 須佐神社 |
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住所 | 福岡県行橋市元永1299 |
駐車場 | あり(無料) |
電話 | 0930-22-6932 |
【参考サイト・文献】
*1: (連歌 小学館 全文全訳古語辞典 | ジャパンナレッジ(2021/1/22閲覧)
*2: 黒岩淳. 連歌を楽しむ 鑑賞と創作入門. 渓水社. 2020, p.2-6.
*3: 連歌 | ウィキベディア (2021/1/21閲覧)
*4: 黒岩淳. 連歌を楽しむ 鑑賞と創作入門. 渓水社. 2020, p.20-28.
*5: 黒岩淳. 連歌を楽しむ 鑑賞と創作入門. 渓水社. 2020, p.170-173.
*6: 連歌巻こうぜ!気楽に連歌入門その一 連歌用語編 | 金沢歴活